2016年10月5日放送のNHK「きょうの健康」にて
椎間板ヘルニアの新常識!放っておけばヘルニアが治る理由と治らない人の差について紹介していました
40歳の男性Aさんは最近忙しく働き続けたせいか腰痛になりました
次第に右足にも痛みが広がりデスクワークで椅子に座っている時に特に症状がひどくなるため整形外科を受診
診断の結果は椎間板ヘルニアでした。腰の椎間板が飛び出す事で腰痛が起こる病気です
ところが医師に「あなたの場合自然に治ります」と言われ痛み止めの薬だけ使う事になりました
半信半疑のAさんでしたが1か月ほどたつと症状がなくなりました。
そして3か月後の画像検査の結果腰が元の正常な状態に戻っていたのです
Aさんは腰痛が脚にまで痛みが出る状態だったのが3か月で自然に治ってしまった・・・
いい事ではあるんですけれども「一体なぜ?」という気にもなりますよね
実はAさんのケース全く珍しくないんです!椎間板ヘルニアについては事実が次第に明らかになってきていて以前の常識がいくつも覆されているんです
番組では椎間板ヘルニアの新常識について現役の医師と共に詳しく紹介していました
椎間板ヘルニアとはどんな病気?まずは基礎知識を解説
今回 椎間板ヘルニアについて解説してくれたのは福島県立医科大学の教授 紺野愼一さんです
椎間板ヘルニアの基本的な情報をまずは紺野医師が解説します
・椎間板ヘルニアの患者さんというのはどのぐらいいらっしゃるんでしょう?
紺野医師「日本では詳細な報告はないんですけれどもアメリカの報告によりますと人口の1%ぐらいといわれています
ですから日本では100万人ぐらいいるというふうに推測されています」
・椎間板ヘルニアの年齢層はどれくらいなんでしょうか?
紺野医師「10代から40歳代と若い世代に多いといわれています
(若い人に多い理由は)遺伝により起こりやすいため早く発症しやすいというふうに言われています
喫煙も発症に関係している事が報告されています
スポーツに関してはその発症とは因果関係はないという事も分かっています」
椎間板ヘルニアというと激しく体を動かすスポーツ何か関係ありそうですが因果関係はないんですね。自分はスポーツと椎間板ヘルニアが関係ない事にまずは驚きました
続いて番組では椎間板ヘルニアによって腰がどのような事になるのかを解説しました
私たちの姿勢や動作を支えているのが背骨の腰の部分腰椎です
腰椎は5つの椎骨という骨から成り立っています
椎骨と椎骨の間にはクッションの役割をする椎間板があります
この椎間板にひびが入り,その中にある髄核が飛び出して神経に影響を及ぼし,腰痛や下半身のしびれなどが起こるのが椎間板ヘルニアです
紺野医師「典型的な症状ですと腰痛がまず始まって続いてお尻の痛みや脚の痛みしびれというふうに広がっていくというのが一般的ですね
同じ腰痛でおじぎ・前かがみになどの体勢や椅子に座った時に症状が楽になる「腰部脊柱管狭窄」との違いについては次のように解説していました
紺野医師「腰部脊柱管狭窄ですとおじぎをしたりあるいは椅子に座ると症状が楽になるというのが特徴的な症状でしたよね
またでもヘルニアの場合はその逆でおじぎをしたり前かがみになるとあるいは座ったりすると痛みは強くなるというのが大きな違いだと言えます」
「腰部脊柱管狭窄」についての情報は「きょうの健康」にも取り上げられていて記事にしたので興味がある方はそちらをどうぞ!
【きょうの健康】腰部脊柱管狭窄の症状と治療方法!脚の痛みやしびれ、尿トラブルが起きたら要注意 - テレビで紹介された健康・美容のまとめ
椎間板ヘルニアの新常識を紹介!!
冒頭でご紹介した!さんは腰痛の発症から3か月後に腰が正常に戻っていました
実はこれが椎間板ヘルニアの新常識のひとつ「多くの人は自然にヘルニアが消える」です!でも一体どうしてなんでしょうか?
紺野医師「ヘルニアが神経の方に向かって出っ張りますと、あるいは神経に接触しますとそこに炎症が起きるんですね
炎症が起きますと反応した免疫細胞が異物であるヘルニアを食べてしまう現象が起きるんです
そうすると徐々にヘルニアが消えていくんですね
多くの場合6か月ぐらいで自然消失が認められると。私たち整形外科医では常識なんですけれども、まだまだ知らない人もいらっしゃると思いますので是非知って頂きたいと思います」
もともと私たちの体にはそうした自然治癒する能力が備わっているんですね
しかし中には自然にヘルニアが消えない人もいます。一体何が違うのか?番組では紺野医師が次のように解説しました
紺野医師「違いはこれ(ヘルニアが消えやすい人と消えにくい人のMRIを比較して)はヘルニアが消えやすいタイプのヘルニアなんですけれども、この髄核とそれから神経の間に後縦じん帯っていうじん帯があるんですね
このじん帯を突き破ったヘルニアですと免疫細胞が髄核を食べやすい事が分かっています
一方これはヘルニアが消えにくいタイプのヘルニアなんですけれども、こちらの方は後縦じん帯を破ってないヘルニアですね
この場合ヘルニアをなかなか免疫細胞が食べてくれない」
紺野医師「こんなに大きいヘルニアだから手術しなさい」というような事が考えられやすいんですけれども、実際こういった大きさに関わらずヘルニアが消えやすいタイプがあるんだという事が分かっています」
椎間板ヘルニアは圧迫される神経によって危険度が異なります
神経根は脊柱管を縦に通っている神経から枝分かれして左右の方向へと伸びる神経の根本部分
この神経根が圧迫された場合、腰痛と片足の痛みが起こりますが危険度は高くはありません
馬尾は脊柱管を縦に通っている神経の束でお尻や脚全体へと伸びる神経とつながっています
馬尾が圧迫された場合は危険度が高くなります
ここで馬尾の圧迫によって起こる馬尾症状チェックを
①しびれはあるが痛みはない
②にしびれや痛みが脚の両側にある
③両足の裏側にしびれがある
④お尻の周りにしびれが出る
⑤お尻の周りにほてりが出る
⑥歩くと尿が出そうになる
2つ以上当てはまれば馬尾症状ありと判断されます
椎間板ヘルニアの場合、診断の結果馬尾症状でない事が分かればとりあえず安心して頂いて良いとのことでした
ただし馬尾症状がある場合は放っておいたり重症化すると排尿障害尿や頻尿といった症状が出てきてしまいます
そして歩きにくいという症状が強くなって放っておくと寝たきりになる場合もあるそうです
少なくとも脚の痛みやしびれが1週間以上続く場合は整形外科を受診するようにと解説していました
続いて椎間板ヘルニアの治療方法について説明します
椎間板ヘルニアの治療方法とは?
椎間板ヘルニアと診断されたら治療の基本となるのが薬です
非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)
アセトアミノフェン
オピオイド鎮痛剤
プレガバリン(神経障害性疼痛治療薬)
これらの薬を使います。大部分の患者はこれらの薬を使えば改善するそうです
他にも神経ブロック注射というのあるので治療を組み合わせていくのが一般的とのことでした
椎間板ヘルニアで手術をすることになるケースは次の通りです
紺野医師「ヘルニアがもし消えやすいタイプであると診断された場合は2〜3か月お薬を使いながら様子を見て判断して結構です
ただし患者さんによってはすぐに症状をとってもらいたい方いらっしゃると思うんです
旅行に行きたいですとかあるいはスポーツをしたい。
あるいは仕事で体を100%使わないといけない方はやはり手術をしてなるべく症状を早くとるという事でいいと思います
馬尾症状が明らかにあるという場合はこれは馬尾症状自体が神経障害としては重症だという事が分かってますので、早めに手術をするというふうにして頂きたいと思います。
で馬尾症状がないと。
神経根障害だという事が明らかな場合は薬物療法で治療するんですけれどもそれでも一向によくならない
あるいは症状が悪くなっているという場合はやはり手術を考えた方がいいと思います」
・手術はどんなふうに行うんですか?
紺野医師「神経をよけて髄核ですね。飛び出した部分を取るのが後方椎間板摘出術と呼ばれている手術を行います」
・手術を決める時に注意した方がいいのはどういう点ですか?
紺野医師「画像だけで初見手術をするかしないかを決めない事ですね」
紺野医師がそう語ったのは椎間板ヘルニアの新常識その2「ヘルニアがあるだけでは症状は起こらない」からなんです
紺野医師「現在腰痛がない。そして腰痛を経験した事のない方々のMRIを撮りますと76%の方々にヘルニアがあるという事が分かったんですね
実際ヘルニアは腰痛の原因の2〜3%にしかすぎない訳ですよね
ヘルニアがある人はとても多いんだけれども、そのうち腰痛や下半身の痛みしびれを起こす人はごく一部にすぎないという事が分かった訳です」
・ではなぜその一部の人には腰痛や脚のしびれ痛みが起こるんですか?
紺野医師「ヘルニアにそのほかの因子が加わると腰痛や下肢痛が起こるという事が分かったんですね
一つは神経への圧迫の強さです
手術をしなければならないほどのヘルニアの人はヘルニアによって神経が強く圧迫されている事が一つ分かっています
もう一つは仕事上の満足度の低さです。同僚との関係がうまくいってなかったりあるいは嫌いな上司がいたりですね
あるいは職場環境に満足がいってないとかですね
最後の1つがうつ不安ストレスという心理社会的要因です
これがありますと症状が出やすいという事が明らかになっています
特にうつ不安ストレスというのは慢性腰痛といって腰痛を長引かせる要因にもなっておりますので、是非腰痛がある方はその事をちゃんと知って頂きたいと思います」
自然にヘルニアが消えるですとかヘルニアがあるだけでは症状は起こらない。意外な新常識でした