2016年10月3日に放送の「きょうの健康」にて
腰痛になったら安静は間違い?腰痛の基礎知識と腰痛危険度チェック方法について解説していました
50歳の男性Aさんは最近腰痛を感じるようになりました
原因は過労によるもの
あまり無理しなければ治まるだろうとしばらくは様子を見ることにします
ところが腰痛は全く良くなることはなく、それどころか痛みで夜眠る事もままならなくなってしまいました
たまらず医療機関を受診したAさんですが画像検査の結果は思いもよらぬものでした
何と腰の部分の背骨が溶け始めているというのです!
お酒を飲むのが大好きな40代の女性のBさんは以前から腰痛を感じていたのですが、最近は特に食後に激しい痛みを感じるようになり不安になり受診することに
診断の結果、Bさんの腰痛の原因は腰とは全く別の病気だったのです
AさんとBさんに一体何が起きたのでしょうか
きょうの健康では「腰痛徹底解説」というテーマで4日間にわたって放送。今回は第1回目の「腰痛が起きたら」でした
AさんとBさんですが腰痛かと思ったら実は骨が溶ける怖い病気だったり原因が腰ではなかったりといろんなケースがありました
腰痛と一口にいっても原因は様々で、中には危険なものもあるので腰痛を甘く見てはいけないんですね
腰痛が起きてしまったら自分でどう判断し対処すればいいのかを番組では詳しく解説していました
今回 腰痛について詳しく解説してくれたのは福島県立医科大学の教授 紺野愼一さんです
整形外科医で特に腰痛の診断と治療が専門とのことでした
腰痛に関する様々な疑問・質問に次のように回答しました
腰痛の方というのはどのくらいいるのか?
紺野教授「日本整形外科学会の調査ですと日本には約3,000万人ぐらいの腰痛の患者さんがいらっしゃると報告されています」
腰痛と思ったら背骨が溶け始めていたというAさん、一体どんな病気だったんですか?
紺野教授「Aさんの病気は化のう性脊椎炎という病気です。化のう性脊椎炎というのは皮膚の化のうですとか、あるいは虫歯をほったらかしにしておきますと血液を通してそれが骨に行ってそれで痛みを起こすという病気です。
(ここで正常な方の腰とAさんの腰のMRIを比較)
これがAさんのMRIの写真なんですけれどもこれが5番目の腰の骨でこれが4番目になります。
この4番目と5番目の間にある椎間板がギザギザになってるのがお分かりになると思うんですけれども、ここに細菌がいてそれで痛みを出してるという事です
この化のう性脊椎炎ですとかあるいはがんの転移、それから骨折があるんですけれどもこれは非常に重い脊椎の病気と言えます
この重い病気が全体の1%。。ですから約30万人ぐらいいる事が分かっています」
Bさんに起こった症状は腰とは別の病気だったという事なんですが、これはどう考えたらいいんですか?
紺野教授「Bさんに起きた病気は慢性すい炎という病気です。
慢性すい炎という病気はアルコールを継続的に飲んでらっしゃる方に多いんですけれども、すい臓には血液の糖をコントロールする作用があるんですね
ですから糖尿病も合併しやすいんです
それですい臓に慢性的に炎症が起きますと典型的な症状として、おなかの痛みですとか、あるいは腰痛が起きるんですね
この内臓由来の腰痛ですけれども慢性すい炎の他に腎盂(じんう)すい炎とか尿管結石、慢性の十二指腸潰瘍などいろんな原因がございます
女性ですと月経時に痛みが強くなる子宮内膜症というのもあります
こういった内臓の病気による腰痛が腰痛全体の2%。約60万人ぐらいいる事が分かっています」
内臓の病気で腰が痛くなるケースがあるとは驚きですね~。内臓と腰痛がどのように関わってくるのかを番組ではさらに詳しく解説していました
こうした内臓の病気でなぜ腰痛が起きるんですか?
紺野教授「内臓から腰にたくさん神経が出てるんですね。ですから腹痛ですとか腰痛が出やすい事が分かっています」
腰が原因の腰痛になる理由
私たちの姿勢や動作を支えているのが背骨の腰の部分腰椎
腰椎は5つの椎骨という骨から成り立っています。この椎骨を上から見てみると後ろ側に穴が開いています
腰部脊柱管狭窄症とは〜症状と原因から手術、治療方法について:腰痛ナビ
これが脊柱管でこの中を脳から下半身へとつながる神経の束が通っています。
ではこうした部位にどんな異変が起こると腰痛が起こるんでしょうか
椎骨が加齢とともに変形し脊柱管が狭くなって、中を通る神経を圧迫する事で腰痛や下半身のしびれなどが起こるのが腰部脊柱管狭窄です
椎骨と椎骨の間にはクッションの役割をする椎間板があります。椎間板にひびが入りその中身が飛び出して神経に影響を及ぼすのが椎間板ヘルニアです
他に腰椎の椎間関節も腰痛の原因となります
また腰にはたくさんの筋肉があります。そうした筋肉が硬くなってしまったり部分的に切れてしまったりする事も腰痛の原因となるのとことでした
腰部脊柱管狭窄椎間板ヘルニア確かによく聞く病名ですよね
そうした病気は腰痛全体のどれぐらいの割合なのか?番組では紺野教授が詳しく解説しました
紺野教授「腰部脊柱管狭窄と椎間板ヘルニアこれは腰の神経から来る腰痛の代表的な病気なんですけれども、全体の10%と報告されています
そして非特異的腰痛、これが85%を占めています
非特異的腰痛の意味ですけれども原因が特定しにくいという意味です」
つまり腰痛の85%は原因がよく分からないという事ですか?
紺野教授「実はその多くは椎間関節由来の痛みであったり、あるいは先ほどお話ししたように筋肉の痛みである事があるんですけれども、それを証明するのはなかなか簡単ではないんですね
例えば椎間関節にブロック注射をしたり、一時的に椎間関節の神経をまひさせるんですね
それで痛みがとれるかどうかって事を確認したり、あるいは椎間板由来の痛みであれば椎間板の中にブロック注射をしてそれで本当に痛みがとれるかどうか
そこまで確認しませんとどこから痛みが出てるのかは分からない訳です
ですから原因を明らかにするのに多少時間がかかるものですから、それよりは早く症状をとると治療が優先されますので、一般的には非特異的腰痛という事で定義されております」
そういう場合は患者さんはどんな病名で診断されるんですか?
紺野教授「いわゆる腰痛症ですとかあるいは座骨神経痛という病名で非特異的腰痛とは言わずに診断される事が多いです」
腰痛の多くは必ずしも急いで受診をする必要はないんですが中には危険な場合もあります
では自分でどのように判断すればいいのか?番組では腰痛危険度チェックという方法を紹介していました
腰痛危険度チェック
①じっとしていても痛む
内臓の病気や重い脊椎の病気の可能性が十分ある
②背中が曲がってきた
骨粗しょう症による背骨の圧迫骨折の可能性あり
③お尻や脚が痛む・しびれる
④脚のしびれにより長く歩けない
③、④の場合は腰部脊柱管狭搾や椎間板ヘルニアの可能性があり、その場合は症状が進行する恐れがある
⑤体を動かした時だけ腰が痛む
この場合は危険な腰痛である可能性は低い
1から4に該当すると危険と判断していいそうです
5の身体を動かした時にだけ痛む腰痛は100%ではないものの、ほとんど心配はいらないとのことでした
Ⅰは危険度大、2は危険。3~4は要注意、5は危険はほぼなしと考えてよいそうです
紺野教授は腰痛危険度チェックについて次のように解説しました
紺野教授「じっとしていても痛む場合は腰のがんであったり、がんの転移であったりあるいは神経の腫瘍の場合もありますね
場合によっては命に影響を及ぼすほどの病気が隠れている場合があります。
「背骨が曲がってきた」これは骨粗しょう症ですね。それによって背中が知らないうちに潰れていると
女性の場合ですと閉経後ですから50歳ぐらいで50歳台から急激に多くなってまいります」
身体を動かした時にだけ痛む腰痛はどう判断すればいいのか?
紺野教授「腰を動かしますと前かがみになると椎間板に負担がかかりますし、後ろに反ると椎間関節に負担がかかると一般的にいわれてますね
これにより痛みが出る事はよくある事です
ですが通常3か月以内に痛みは治まってくるんですけど、もし3か月以上ずっとこういった症状が続く場合は慢性腰痛の可能性があるので、その場合は整形外科に受診した方がいいと思います」
こうした危険がない腰痛(体を動かした時にだけ痛む場合)の場合自分で対処するいい方法?
紺野教授「まず一番のおすすめはウォーキングなどの適度な運動を毎日行って頂くという事ですね
ウォーキングしますと脳の血流増えますしそれから痛みを抑制する脳の物質が増えるんですね
ですからウォーキングを毎日継続して頂くというのがまずいいと思います
まず以前は腰痛があるとなるべく安静にしてなさいという事で皆さんもそう思ってらっしゃると思うんですけれども、でもこれは常識のうそで安静はよくないんですね
ぎっくり腰であっても動ける範囲で動いた方がいいという事が科学的に証明されています
ですから腰痛があっても仕事などできる範囲で通常の生活を続ける事が非常に大切になってきます
それから楽しい事リラックスできる時間をつくるのが大事です。楽しい事としては例えば好きな食べ物ですね
あるいは好きな映画を見たりあるいは好きな匂い。アロマとかも有効です
好きな音楽を聴くというのもいいと思います。
そういった自分にとって楽しい事をしますと痛みが抑制されるという非常に高いエビデンスがありますので、これを生活の中に取り入れて頂くといいと思います」
腰痛やぎっくり腰の時は安静するのが一番というのは間違いで、動ける範囲で動き心のケアも大切というのは初耳でした
腰痛についてもっと知りたくなり次回の放送が楽しみです